11月の星空を撮る


月齢12の月 と 木星の大接近











月齢12の月と木星の大接近 -金生山-


11月も終わろうとしている25日、素晴らしい天体ショーが見られた。5日前の月と土星の接近に続いて、月齢12の月と木星の大接近だ

11月3日に衝を迎えた木星は-2.8等級と明るく、月との競演を撮っても月明かりに負けない美しい姿が見られるはず、と期待。この日の日没は16時42分、天文薄明は18時11分。月と木星の見かけ上の最接近は17時06分
ひょっとしたら日没前の昼間の木星も撮れるかもしれない、と期待を込めてシャッターを切る。月がなかったら、青空のいったいどこに木星があるのかと思うしかないが、今日の木星は月と大接近する。この時間であれば月のすぐ右下あたりか、と見当をつける

あった、日没20分前の木星! 金星ならいざ知らず、昼間の木星だって写るんだ!

夕陽に照らされる美濃平野部。左に金華山と岐阜城が見える。右は恵那山。昼過ぎまで雲が途切れなかったが、いつの間にか快晴となった
上の3番目の写真は等倍で切り出したもの。しっかりと木星が確認できる

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100mm、ISO100、f8、1/320秒、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはoff、高感度NRはoff、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年11月25日16時22分






Twilight Hour の濃尾平野に浮かぶ 月 と 木星





Twilight Hour の濃尾平野に浮かぶ 月と木星


夜の帳が降り始めると、月齢12の月に寄り添う木星がくっきりと トワイライト アワー に浮かび上がった
時刻は17時12分。ほぼ最接近の時間

月と木星の直下には恵那山、地平線を左にたどると金華山と百々が峰の左に雪をいただいた御嶽山
滅多に見られない美しい光景だが、ここでは、他には誰も見る人はいなかった

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24mm、ISO200、f8、1.3秒、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはoff、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7M4 + FE 24mm F1.4 GM

2023年11月25日17時12分






月と木星の大接近 を撮る
- 木星の縞模様 に注目 -





月と木星の 大接近を撮る


10月の満月と木星の接近では、満月が白飛びすることを覚悟の上で木星のガリレオ衛星を撮影した。今回はガリレオ衛星には目をつぶり、月と木星面の縞模様を撮影した。月の明るさに露出を合わせると、おそらく木星面の縞模様が浮かび上がるのではないかという計算。結果は上の写真の通り。撮影時に縞模様が出ていることに気づいたので、下の写真は同じ写真の木星部分を200%に拡大してみたもの

200%に拡大しても画像が破綻せずに、しっかりと縞模様が写っていることがわかる。木星面の縞模様は、木星の表面を覆うアンモニアやメタンの雲の模様。木星の自転は10時間で一回転という高速なので、東西方向に流れる風が生まれる。これが縞模様を生み出している
200%に拡大した下の写真を見ると、黒っぽい2本の縞がわかる。上を南赤道縞といい下を北赤道縞という。よく見ると、南赤道縞にくっつくようにある黒い大赤斑も写っていることがわかる。赤道儀を使わない三脚固定撮影でもここまで写るのだ、と改めて写真を見直した

今回は月と木星の大接近がテーマ。大気の状態がよい時に屈折望遠鏡で複数枚をスタッキングした木星を撮影する機会は、また次回

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400mm、ISO100、f8、1/250秒、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはoff、高感度NRはoff、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年11月25日17時43分















地球照を伴う上弦の月の月没 と 土星の接近





地球照を伴う上弦の月の月没と土星との接近 -美濃平野部-


星空を観望するのに嫌われる月。いくら快晴でも月が出ていると夜空の星はその強烈な明るさにかき消される
しかし今夜ばかりは月が主役

上弦の月の月没は23時22分。それより一足早く池田山に月が沈もうとしている
上弦の月といえどその明るさは強烈。そこで池田山の稜線に隠れようとする直前を狙った。おかげで半月では印象に残りにくい地球照もよく分かる
月と並ぶもう一つの主役は、月に接近する土星。この時の土星は0.8等級。月が姿を隠すにつれて存在感を増していく

月と並ぶ主役の土星は、今週後半には木星にその座を譲る


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180mm、ISO400、f2.8、1/2秒、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはoff、高感度NRはoff、三脚で固定撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + TAMRON 70-180mm F2.8

2023年11月20日23時07分






街明かりの中 冬のダイヤモンド を撮る





街明かりの中 冬のダイヤモンド を撮る -美濃平野部-


日本には四季がある、というのは昔話なのかもしれない。現在は長い夏が過ぎると一気に冬がやってくる気がする。移動性高気圧に覆われる秋晴れの季節はどこへ行ったのだろうか

私は高校卒業後、大学の合格発表までの間に出雲・吉備をまわったことがある。宿泊はすべてユースホステルで、自転車を借りて回った。その時のフィールドノートは今も残っているが、大学と博物館それに教育委員会を訪ね歩き、当時考えていた考古学上の仮説を胸に抱いて遺跡と遺物の略測・観察を重ねていた。図書館では文献の複写に時間を費やした

その時に松江で教えてもらったのが「弁当を忘れても傘を忘れるな」という言葉。3月とはいえ季節はまだ冬で毎日時雨れていた。この感覚は太平洋側の美濃平野部で育った私には新鮮だった。と同時に黒い雲に覆われる日が続くということがまだよくわかっていなかった

徳山に暮らすようになって9度の冬を越した。徳山村は太平洋岸にありながら美濃平野部の天気予報は当てにならない、福井県嶺南地方の天気予報を見る必要がある、ということを知った。中学生の頃から自転車で岐阜市内の自宅から各務原市炉畑遺跡の調査に通った時も、各務原台地は岐阜県美濃地方ではなく愛知県西部の天気予報が合致している、ということを教えられた。余談だが、『炉畑遺跡発掘調査報告書』に掲載されている十字トレンチの実測図には竪穴住居跡に関連する遺構が図示されているが、高校1年生だった私が実測・作図したものだ

徳山は豪雪地だった。所謂五六豪雪(昭和56年、1981年豪雪)では3メートルの積雪計が埋没し、さらに2メートル継ぎ足した分も雪に埋もれて積雪の観測ができなかった。豪雪は56、57、58と3年続いた。徳山ダム建設に先立つ補償交渉が進み、大雪が長い年月と一緒に押しぶすように降り続いた

徳山での9回の冬越しでわかったのは、冬の天候は「激しい風雨」「しんしんと降り続く雪」「わずかな冬晴れ」が交互に訪れるということだ。もっとも五六豪雪の時は1か月以上毎日雪が降り続いたので、このサイクルが必ず訪れるとは限らないが、冬の天候はだいたいこのサイクルだった

今はまだ11月だから冬ではないのだろうが、気分は初冬といっていい。だが今年はどこか違うように思う。まず日中の気温が高い。そして湿度が高い。そのため気象予報には現れなくても揖斐谷では夜になると霧や谷筋に沿った雲が発生する。局地的な前線が発生するということなのだろう。結果、満天の星空が望める日数は極めて少ない

この夜も揖斐谷での星空を諦めて、美濃平野部まで車を走らせた。この日の天文薄明は5時ちょうど。正味1時間ほど撮れればいいか、という皮算用
薄明が始まってしばらくした5時15分まで撮影したが、撮りはしたものの光害は酷い。さらに夜明け直前だけあって人工衛星の光跡は一面に溢れている。上の写真は光跡が少ないコマを選んでいる

光害は酷いが、冬のダイヤモンドがわかる。写真の右上にぎょしゃ座の1等星カペラ。カペラが東から昇ってきて冬の始まりを告げる。そこから反時計回りにふたご座のカストルとポルックス。カストルは青白く、ポルックスはやや赤味を帯びる。ふたご座の左下にはこいぬ座の1等星プロキオン。全天の恒星のうち最も明るいおおいぬ座のシリウスとオリオン座のベテルギウスと3つの1等星が冬の大三角を構成する。オリオン座でベテルギウスと対角にあるのがリゲル。オリオンの右隣におうし座のアルデバランが赤く輝き、その上のカペラに戻って冬のダイヤモンドの完成。アルデバランの右隣にはプレアデス星団(昴)が華を添える
写真の左下から右上のカペラに向かって冬の天の川が流れる。冬の大三角を横切っていて、ベテルギウスとプロキオンの中ほどの天の川の中には ばら星雲 が見える。肉眼では見えないが、写真に撮っていることに驚く
冬は明るい星が多いので、全天が賑やかだ。街明かりの中でも見つけられるのでぜひ観察してほしい

ふたご座の左には春の星座であるかに座のプレセペ星団が顔を出している。その左の写野外にしし座がある。間もなく極大を迎えるしし座流星群が1つぐらい流れないかと期待したが、かすりもしなかった


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20mm、ISO1000、f2、20秒、マニュアルWB、スターエンハンサー使用、Raw
長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7M4 + FE 20mm F1.8 G

2023年11月16日04時36分






New nano.tracker Ⅱ をテストする





サイトロン・ジャパン ポータブル赤道儀 New nano.tracker Ⅱ をテストする


サイトロン・ジャパンから待望のポータブル赤道儀 New nano.tracker Ⅱが発売された。前モデルの New nano. tracker が流通から消えて久しい。サイトロン・ジャパンに問い合わせて半導体流通の問題で製造が止まっているだけで、生産中止ではないことは確認していたが、リニューアルしての発売にさすがに安堵している。手軽なポータブル赤道儀として、性能と他に類を見ない使い勝手を備えた優品だ

今回 Ⅱ へと更新されるにあたって外部電源ポートが USB mini-B から USB Type-C へと変更された。本体は単三乾電池(ニッケル水素電池など)で駆動するが、3時間を超すような流星群撮影などではUSBバッテリーを接続して長時間の撮影に備えることになる。この場合、USBバッテリーに接続するのはカメラ本体、New nano. tracke Ⅱ 、レンズに巻き付ける結露防止ヒーターてあるが、SONYはUSB給電が USB Type-C であるから本製品とケープルが共有できる。2本のケーブルが必要であることは変わりないが、真っ暗な撮影現場で2本のうちどちらを使っても良いし、またポートに差し込む向きを気にする必要もない

本体の重量はわずか400グラム。星野赤道儀として超広角から広角レンズでの星野撮影に威力を発揮する。車に三脚と一緒に放り込んでおいて、すぐ取り出して使用したり、山へハイクアップするようなロケーションでもペットボトル1本より軽量であることから、持ち出すことも苦にならない

さて11月10日の発売日当日に届いた New nano. tracke Ⅱ を、翌11日に早速テストした
詳細は別の機会に譲りたいが、使い勝手に変更はないのでまごつくこともない。星野赤道儀として広く推奨できることを改めて確認した

サイトロン・ジャパンのページは こちら


上の画像は揖斐谷ではなく美濃平野部まで出て撮影したもの
薄明は終わっているが、街明かりが邪魔をする。しかしこの時間帯としては良好な星空を望むことができた。右下の電線はご愛敬

秋の天の川の中にカシオペヤ座、その右にアンドロメダ座大銀河M31。M31の右上の写野上端近くにあるのが2等星のアルフェラッツ。ペガスス座とアンドロメダ座の境界にあり、アルフェラッツの境界と呼ばれる
カシオペヤ座の左にはPolaris(北極星)。カシオペヤ座から天の川に沿って下るとペルセウス座の二重星団hχがある。写野の右端近くで輝くには木星。その左下にはプレアデス星団M45。そこから左に目を移すと、樹木の影から姿を出したぎょしゃ座の1等星カペラ。ぎょしゃ座は冬の季節の到来をを告げる星座だ

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20mm、ISO800、f2、30秒、マニュアルWB、スターエンハンサー使用、Raw
長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7M4 + FE 20mm F1.8 G

2023年11月11日19時38分






秋の星空を撮る





街灯が煌々と照らす中 秋の星空を撮る


シーイングは最低、しかも街灯が煌々と照らす。絶望しそうになりながらも、深夜には雲が押し寄せる予報で、どうもいけない
照明の上方光束によって夜空の星がかき消されている
上の写真は光害カットフィルターを使用し、苦労して調整したもの。LED照明の普及によって一層厄介な光害が増えている


環境省は『光害対策ガイドライン』で次のように指摘している


※※※※※※ 「ガイドラインの概要について」から引用 ※※※※※※

本ガイドラインは、光害を抑制し、屋外における良好な光環境の形成を目的に、照明による人や動植物、夜空の明るさなどに及ぼす影響への配慮に関する指針や対策を示すとともに、照明に対する考え方・あり方を示すものである
光害とは、良好な光環境の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、又はそれらによる悪影響のことである。・・・(中略)・・・特に、上方光束(水平より上方へ向かう光束)については、夜空の明るさや鳥類・昆虫類等への影響があり、特殊な状況・目的以外では人々の生活の利便性の向上に寄与せず、省エネルギーの観点からもできる限り削減することが望ましい(後略)

※※※※※※ 引用おわり ※※※※※※


ガイドラインの全文は環境省「光害対策ガイドライン(令和3年3月改訂)をご覧いただきたい
多くの皆さんに関心を寄せていただけることを願っている



上は苦労して撮影・調整した星空画像
画像の左上から中央下にかけて秋の天の川が流れ、天の川にはカシオペヤ座が存在感を放つ。カシオペヤ座のすぐ下にはアンドロメダ座の二重星団hχ。光害のため肉眼ではまったく見えなかったアンドロメダ座大銀河M31も画像の中央上端に姿を見せている。天の川の右には強烈な光を放つのが木星。11月3日に衝を迎えたばかりで、ほぼひと晩中夜空に輝いている。プレアデス星団(昴)の下にはヒアデス星団


11月に入っても昼間は夏日の連続。澄んだ秋の夜空にはほど遠い日が続いている

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20mm、ISO1250、f2、30秒、マニュアルWB、スターエンハンサー使用、Raw
長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7M4 + FE 20mm F1.8 G

2023年11月08日21時35分






月出の明るさの中で 冬の星空を撮る






月出の明るさの中で星空を撮る


今年も冬型の季節がやってきた
そんなには寒くないのだが、それでも冬型の気圧配置となると揖斐谷ではお手上げだ。この夜も0時過ぎまで北西から押し寄せる雲に覆われる予報。だが、1時頃にはほぼ雲量3以下となるらしい。
問題は01時08分の月出。月齢は24.4で下弦を過ぎていることは幸いしているが、月出の頃の東天は雲量0の快晴予報。明るい月明かりを覚悟しなければならない
覚悟を決めて美濃平野部まで1時間車で下る。マクドで0時まで勉強と読書で時間をつぶし、閉店後に撮影場所まで移動

天頂から西天の雲は多いながらも、東からは星空が寄せている。しかし覚悟した通りの強烈な月明かり。街中の街灯も明るすぎる
しかし30分ほど夜空を見ていると冬の星空が見えてきた
揖斐谷での撮影が難しくなるこれから。自分の健康状態さえ問題なければ遠出するのだが、無い物ねだりはできない

写野の中央を冬の淡い天の川が横切る。その左にはかに座のプレセペ星団。中央下は強烈な光を放つシリウス。オリオン座の右上にはヒアデス星団とプレアデス星団

おうし座北流星群を意識した構図だったが、写野外の南天に散在流星が1筋流れたきりだった

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20mm、ISO1000、f2、20秒、マニュアルWB、スターエンハンサー使用、Raw
長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7M4 + FE 20mm F1.8 G

2023年11月08日01時29分